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May 15, 2018

ビッグデータ分析、機械学習、人工知能(AI)等の分野における技術発展は、世界中で様々な業界を変容させその先駆者に洞察や事業機会をもたらす一方、出遅れ組は時代遅れとなるリスクにさらされている。こうした技術的革新は、実際に不動産セクターにどの程度影響しているのだろうか。

不動産は依然として立地に依存するところが大きいものの、プロパティー・テクノロジー(不動産テック)の発展がその力学を変化させている。接続性とアクセス性が今や主要な市場要因として前面に躍り出ており、このトレンドは拡大する見通しだ。

JLLアジア太平洋地域担当チーフ・インフォメーション・オフィサージョージ・トーマスは「最大のリスクは取り残されること。より多くの投資家、デベロッパー、および土地所有者は不動産テックがもたらす付加価値に注目し、テナントにより多くの選択肢がもたらされる中、最も基本的な技術サービスすら採用できない出遅れ組は資産の競争力を失うことになるだろう」と警鐘を鳴らす。

実世界への応用

テクノロジーは不動産業界で長らく差別化要因となっており、有力なデベロッパーや資産管理会社はそのポートフォリオに見合った様々な不動産テックを適用してきた。トーマスは「例えば、セキュリティー・センサーやオフィスビルのテナントの快適感を高める空調センサーは長年使用されている。また、様々な市場でとりわけエネルギー効率について、ビルの監視にテクノロジーの活用がみられる」と指摘する。

データ分析も歴史のあるテーマだ。従来、プランナーや小売業者は、立地の選択に際して地方自治体が収集した交通データに基づく人口構成や地理空間の分析を活用してきた。注目したいのは、より最近になって今や容易に入手可能なビッグデータの豊かなフローの活用へと移っていることだ。トーマスは「スマートフォンやより洗練されたWi-Fi/ブルートゥース・センサーの台頭で、モール―とりわけ成熟市場におけるモール―は小売テナントの配置や商品配分、来場者パターンの最適化に様々な種類のビッグデータを用いるようになっている」と説明する。ビッグデータやAIを消費者のオンラインおよびオフラインのエクスペリエンス統合に活用した大手企業には、中国アリババ社の生鮮食品スーパーであるヘマ(HEMA)が含まれる。その背景では、ロジスティクス業者も流通プロセスの一層の自動化と最適化やオフライン小売セクターの需要対応支援にビッグデータを利用している。

業績改善の可能性

急速なイノベーション、テクノロジーのコスト低下、使用可能なツールセットの発展は、既存業者にも新たなスタートアップ企業やディスラプターにも利益をもたらしている。こうしたトレンドは技術的リーダーに優れた競争上の優位性をもたらすものであり、最新の技術能力を割安に展開できるようになると共に、その重要性が増している。トーマスは「オフラインの資産やプロセスと統合された技術の重要性がますます高まり、不動産は更にサービス型商品へと移行する」と予想している。トーマスが注目する分野の一つは、機械学習が投資家やポートフォリオ運用会社にもたらす価値である。例えば、資本支出の観点からエレベーター等の資産の商品寿命を予測し、改善するために機械学習を適用することが考えられる。また、小売業者が翌月の賃料支払に十分な来場者を確保しているかも事前に予測できる。同様に、営業時間中に建物に出入りする従業員の数を追跡調査して、テナントがスペースを拡大するべきなのか縮小するべきなのかの判断に用いることも可能だろう。トーマスは「テクノロジーがオフィスのスタッフの働き方も変化させている。仮想または拡張現実サービスの統合においてそうした例がみられる。新しいテナントや顧客を誘致し、提供されるサービスの『固定』化促進にも活用できるだろう。他方、法人テナントは従業員の動きのヒートマップを作製することにより、変化する労働力の需要に応えてフロアスペースを最適化できる」と期待している。

落とし穴に注意

最新の不動産テックのイニシアチブは効率性改善や最適リターンを約束するものの、これらに関連して大きな課題も多数存在する。トーマスはその重要な例として―とりわけ業界参加者がビッグデータやAIへの依存を高める中―各国のプライバシー基準の遵守を挙げる。モノのインターネットは、データのプライバシーやセキュリティーに関するプロトコルに関する問題をもたらしている。

テクノロジーの拡張性も、追加的な課題である。トーマスは「デベロッパーや土地所有者は保有資産を独自のものであると考える傾向が強いため、特定のテナントや占有者に対応した個別のアプリケーションが開発される。そのような状況でのサービス展開にはより多額のテクノロジー投資が必要となる。また、新たなテクノロジーの導入速度も、資産ごとに戦略を物理的に導入し、実行するために必要な期間に制約される」と指摘する。更に、利用可能な技術が急速に発展していることも事態を複雑にしている。トーマスは「テナントや占有者のニーズや需要の変化に遅れず各物件や関連サービスをアップデートするためには、継続的な多額の投資が必要となる」と懸念する。

しかし、テナントの期待は最新の技術的革新と歩調を合わせて発展するため、デベロッパーや土地所有者は時代の変遷に合わせて対応するしかないと認識せざるを得なくなるだろう。

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