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2017年の商業用不動産投資市場を俯瞰すると、圧倒的な存在感を醸し出したのがリテールセクターである。JLLリサーチ事業部の調査では、2017年のリテールセクターの取引総額は9,742億円。前年比90%増と「一人勝ち」状態だった。他のアセットに目を向けるとオフィスは前年比10%増となったものの、物流施設、ホテル共に前年比マイナスとなっている。商業用不動産投資総額が前年比13%増の4兆1,360億円を記録したが、牽引役となったのはリテールといって過言ではない。2017年の商業用不動産直接投資総額に占めるリテールの割合は22%。JLLが統計を開始した2006年以降、過去3番目に高い。リテール単体でみた投資総額は過去4番目、変動率では過去3番目であった。今最も「ホット」な投資セクターであることが浮き彫りになった。

景気回復で再注目

景気回復局面で存在感を発揮するのがリテールの最大の特長だ。端的に言えば、景気回復を実感する不動産投資家が増えたため、リテールの取引が急伸したといえる。実際、実質GDP成長率は2017年10-12月期まで8四半期連続の増加となり、28年ぶりの長期成長を記録した。この間個人消費も概ね緩やかな持ち直しが続いた。消費回復の背景には株高による資産効果も考えられる。弊社の調査では、リーマンショック後で景気が冷え込んでいた2009年は総投資額に占めるリテールへの割合はわずか9%。当時は安全資産であるオフィスに投資が集中していた。これがアベノミクスによる景気浮揚が始まる2013年になると状況は一変、リテールの投資比率は30%に拡大している。

懸念材料としては2016年の投資額が急激に落ち込み、投資比率も13%(2015年は20%)へ縮小している点だ。これについては不動産価格が高騰し、そもそもマーケットに投資適格物件が枯渇していたことが挙げられる。超低金利環境にあって取引が成立しなければリファイナンスを選択すればいい売主が強気の価格を提示するため、買主の目線と大きな差が生まれ取引が進まなかった。リテール物件は他セクターとの比較で特に供給不足が顕著だった。

しかし2017年になると売主の姿勢が徐々に軟化してきた。また買主も徐々に目線を合わせてくる。JLLが発表している「グローバルプライムリテールプロパティクロック2017年第4四半期」を見ても明らかなように、東京プライムリテールは「賃料上昇の減速」フェーズに突入し、すでにピークが近づいている段階であるため、売主が「売り抜け」を視野に入れ始めたとも考えられる。また、2017年はノルウェー政府年金基金を運営するNorgesBankInvestmentManagementの不動産投資部門NorgesBankRealEstateManagement(NBREM)が東急不動産と共同投資で表参道周辺の商業施設5棟を1,325億円で取得した大型取引に加えて、J-REITや私募ファンドによるプライムリテールや近隣型商業施設の積極的な取得、ラグジュアリーブランドPradaによる自社グループブランドMiuMiu青山店の長期保有を見越した取得等、様々な属性の取得者による取引が重なった点も見逃せない。

CAP2%台だが長期金利との差は大きい

投資対象としてのキャップレートは2017年第4四半期時点で2.8%と一見すると旨みがあるとは言い難い。そうであるにも関わらずリテールへ投資資金が集まる理由の一つは、東京オフィスや大阪オフィス、東京圏の物流施設といった他のセクターでもいえることであるが、イールドギャップが見込めるためだ。確かにリテールの利回りは低下しているが、それ以上に低金利環境下で長期金利との利回り格差は広がっている。前回の投資拡大期に比べてもその差は大きく、投資メリットがあるとの判断に繋がっている。そして今後は米国における金利上昇の影響で、低金利が続く日本へ「乗り換える」投資家が増えることも予想され、ますます東京の不動産投資マーケットは活性化していくのではないだろうか。NBREMの取得が示唆するのは、プライムリテールが提供する物件は立地が優位であり、安定的な成長を見込める投資対象として超長期保有を前提とした投資家に評価されていること。安定的な収益が見込める近隣型商業施設に対する投資需要もまた底堅い。
(著:JLL日本 岩永 直子)

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