Share

地域一番店をいかに再生すべきか

昨今の商業マーケットを俯瞰すると不動産取引における商業施設の売買が急増しており、それに伴い取引価格が高騰し、投資家やオーナー間で取引が成立しない状況に見舞われている。他方、テナント店舗の売上は伸び悩んでおり、賃料収益自体はそれほど上がっていない。加えて郊外に存在していたかつての地域一番店が少子高齢化等の人口流出や新規に開発された競合物件におされ、苦戦に追い込まれているケースも少なくない。こうした背景から、低稼働に陥った商業施設を値ごろな価格で取得し、バリューアップ等で再生して高稼働物件にしつらえてから売却するオポチュニスティック・ファンドの存在感が増している。

商業施設を取り巻く厳しい環境

商業施設が苦戦を強いられる最大の理由は施設そのものの魅力が低下しているためだ。来店客が減少し、テナントを圧迫、最終的に退去に至る「負の連鎖」に陥ってしまう。そして、インターネットで商品を購入するEC市場も拡大しており、実店舗の売上を圧迫している状況は否めない。こうした状況下で新たにテナントを誘致するのは厳しい。一例を挙げると、かつて新規開発された大型商業施設のテナント構成は8割が物販店舗、特に女性用衣料販売店が積極的に出店していたが、直近では5割程度まで低下している施設も見受けられる。半面、出店意欲が高い業態も存在する。サービス、エンターテイメント、シニアビジネス、サブカルチャー、免税店関連が有望だ。加えてコミュニティの場としての新たな役割が商業施設に求められるようになっている。特に郊外型の商業施設には雇用を生み出すなどの地域貢献を視野に入れ、行政・地域一体となったコンセプトづくりが再生の足掛かりとなる。とはいえ、商業施設の再生には多額の資金が必要になる。全館リニューアルが難しくとも、フロア単位、ゾーン単位で定期的にリニューアルを施さなければ、いずれ消費者は離れていくだろう。

30億円の商業施設を再生、100億円超で売却

JLLリテールチーム及びJLLモールマネジメントはこれまで苦戦を強いられている多数の商業施設の再生をてがけてきた。JLLが再生した一例として、福岡市に所在するある商業施設は、開業から5年で入居率が30%程度まで低下していた。そこで開発当時のコンセプトを一新し、大手量販店やドラッグストアなど、デイリー性の高いテナントの他、キーテナントとしてサブカルチャー業態のテナントを誘致した。当初は集客装置の役割を期待し割安な賃料で契約したが、集客数が上昇したことで賃料を上げても出店希望のテナントが集まるようになった。この物件はテナントが2回転し、売買取引も2度行われた。当初30億円程度の売買価格だったが、最終的には100億円超で取引が成立するまでになった。

綿密なマーケット調査が再生の鍵

JLLのアプローチは、商業施設の再生を成功に導くためには徹底した調査・分析が大前提となる。立地、交通、人口、競合、エリア特性の把握など、綿密なマーケット調査を行う他、来店客への対面アンケートやウェブアンケートによって定量的なニーズを把握することも必要だ。そして対象施設の現状を分析し商環境や動線計画等のハード面から施設が抱える課題を抽出していく。そして利用者の心理分析をする目的で、利用者へグループインタビューを実施し、心理分析から消費行動の潜在的な理由を把握していく。数値データや消費者の心の動きもしっかり把握したうえで戦略を立案し、プランニングしていかなければならない。マーケット分析の結果、足元商圏のみならず広域からの集客の可能性や外国人観光客を誘致する可能性もありえる。老人や子供の人口動態、競合店の分析など、様々な情報から再生への道筋を見極めることができる。
(著:JLL日本 飯尾 太一)

Share

Never miss an update from The Investor.

Subscribe Now!