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November 1, 2018

生き残りの鍵は「コト消費」と「インバウンド」

「目的買い」で商業施設が疲弊

小売業は新時代に突入した。アマゾンや楽天に代表されるeコマース(電子取引)の台頭は実店舗の売上を圧迫する要因になりつつある。高度経済成長期のように「放っておいてもモノが売れる」時代は終わり、消費者のニーズは「目的買い」に傾いている。衝動買いは店舗へ行き、その場の気分で商品を購入するが、目的買いにおける消費者の審美眼はよりシビアだ。まず目当ての商品群を徹底的に調べ、実店舗で性能や使いやすさなどを直接手で触れて確かめる。そして購入を決めると自宅へ戻り、最安値で販売する店舗をインターネットで探し出す。こうした消費者が増加しており、特に高額商品になるほど「目的買い」の傾向は強まっていく。
「安く良いモノを買う」ことにプライオリティを置く「目的買い」は商品の所有に価値を見出す「モノ消費」の典型例といえるが、最終的に商業施設は価格競争に巻き込まれ疲弊する。GMSと呼ばれる郊外型ショッピングモールや地方の百貨店の売上が伸び悩んでいるとの報道を目にする機会が増えているが、モノ消費から抜け出せなかったゆえの結果(末路)ともいえるだろう。「モノ消費」のマーケットでいくら戦っても消耗戦となるのが関の山だ。商業施設が生き残っていくためには新たな付加価値を消費者に提供し、差別化を図っていく必要がある。
1つの施策が「コト消費」への転換といえるだろう。

ここにしかない「体験」を提供

「コト消費」とは商品やサービスを購入することで得られる「体験」に価値を見出す消費行動を指す。「モノ消費」の対極といえるが、今「コト消費」をコンセプトに掲げた商業施設が人気を博している。子供たちが職業体験できるテーマパークをはじめ、シニア向けの生涯学習施設、AI(人工知能)やVR(バーチャルリアリティ)を駆使した室内型エンターテイメント施設が好例だ。これらの施設は開業当初から施設のコンセプト自体「コト消費」に重点が置かれているが、既存の商業施設においても「コト消費」的なエッセンスを取り入れるのは十分に可能だ。例えば、今後増えてくると予想されるのはSNSの有効活用だろう。「インスタ映え」という流行語は知られるところだが、不特定多数をターゲットにしてきた商業施設がSNSでつながった特定のコミュニティに属する人々をターゲットにしたイベント等を提供することで実店舗に足を運んでもらっている。

実店舗を「ショールーム」へ

もう1つ、「コト消費」のトレンドは実店舗の「ショールーム化」を促している。実店舗は商品を体感できるショールームと位置づけ、消費者は実際に商品に触れてみて、気に入ったらQRコードをスマートフォン等で読み取り、最終的に無人のレジで精算する。消費者のメリットは購入した商品が後日配送されるので荷物にならない。また実際に商品を手にして納得して購入するので返品も少ない。一方、店舗側は在庫を大量に抱える必要がなく、人件費の抑制に繋がる。消費者と店舗、双方にメリットがある「新業態」といえるだろう。現在はテストモデルの段階だが、GMSや百貨店で採用するケースは今後増えてくるのではないだろうか。

インバウンドでマーケット人口を増やす

「コト消費」という明確な方向性が浮かび上がってきたが、少子高齢化による足元商圏の崩壊にも目を向けなくてはいけない。GMSや百貨店が開発される際、高精度なマーケティングが行われるが、少子化によって開業時に設定された顧客ターゲットは成立しておらず、苦戦する要因の1つとなっている。コト消費への転換は商業施設にとって将来展望を見据えた起死回生の策となりえるが、そもそも先細りしたマーケット人口を増やしていかなくては「未来」がない。ただし、注意すべきは国内消費者を遠方から誘致するのは商圏を食い合うだけで意味がない。新たな需要を掘り起こすべきであり、やはり急増するインバウンド需要をいかに取り込んでいくかが鍵となる。JLLリテールグループではインバウンド専門チームを組織している。ランドオペレーターにJLLが管理受託している商業施設を紹介し、観光ツアーに組み込んでもらうのが狙いだ。また、施設を舞台にしたセールスプロモーションやイベント、宣伝等にも積極的に取り組んでいる。
誰もが感動する「体験」を提供する「コト消費」への対応と、新規顧客の開拓となるインバウンドの誘致。2つのキーワードを両立することが商業施設の活性化の鍵となるだろう。(著:JLL日本 飯尾 太一)

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