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2019年第1四半期におけるリテール投資総額は前年同期比76%増と好スタートを切った。人口減少やeコマースの台頭など、リテール不動産を取り巻く環境が激変しているが、こうした環境下においてリテールセクターに対する投資家の関心は地方都市の都心型商業施設へ向かっている。

投資家の関心は地方都市の都心型商業施設へ

2018年の商業用不動産投資市場におけるリテールセクターの投資総額は5,010億円となり、前年比46%の減少、また、投資総額が全体に占める割合は12%となり、同10ポイントの低下となった。2017年の投資総額は前年比90%の増加、投資割合22%の好調から状況は一変し、例えば人口減少やeコマースを逆風に、投資家の関心が離れたかのようにみえる。

さりながら、2018年のリテールセクターにおける投資事例をみてみると、投資総額が抑制された要因は、投資家の敬遠ではなく、以下が挙げられる。

2018年リテール投資総額が減少した3つの要因

① 東京プライムリテールはキャップレートが低下し価格高騰
2018年に東京のプライムリテールの価格は上昇ペースが加速した。背景には、地価上昇と賃料上昇のほか、利回りにとらわれない投資活動を行う個人富裕層と資金力も強みとする機関投資家を含む伝統的な不動産投資家が競争した結果、投資利回りに一層の低下がみられたことが挙げられる。尚、良好な資金調達環境や将来の賃料上昇期待を背景に物件の供給不足が生じたのは各セクター共通してみられた投資総額の抑制要因であったが、リテールセクターの投資利回りが他セクターに先んじて低下したのは、個人富裕層の存在感が影響したためである。価格高騰の結果、取引の成約目線は合いにくくなっている。

② J-REITによる地方都市の商業施設取得が市場を牽引した2018年
2018年と2017年の高額取引上位20物件を比較すると、2018年はJ-REITによる大阪、名古屋、福岡に所在する都心型商業施設や郊外型ショッピングセンターを含む地方物件の取得が半数程度となっているのに対して、2017年は長期の投資家による東京圏に所在する物件の取得が15物件、うち6物件は東京のプライムリテールエリア近隣の都心型商業施設の取得となっていた。地方への投資の広がりは、リテールセクターに対する投資家の関心を反映していると考えられる一方で、地方都市圏と首都圏との価格の格差は依然大きいことから、投資総額を抑制した一因となったと考えられる。

③ 2017年の長期の投資家による首都圏の都心型商業施設取得からの反動
さらに、2017年のリテール不動産投資総額は金融危機以降2番目に大きくなった年であった。2) に上述の通り、銀座や表参道のプライムリテールエリア近隣に所在する都心型商業施設の大型取引が多くみられたためであり、これにはノルウェー政府年金基金による都心型商業施設5物件の取得、ラグジュアリーブランドPradaによる自社グループブランドMiu Miuの旗艦店取得が含まれ、いずれも長期から超長期にわたる保有が目的の取得である。このように稀に有る大型取引がみられた結果、投資総額の変動が大きくなっている。

上述の通り、2018年のリテールセクター投資市場は地方圏の都心型商業施設や郊外型ショッピングセンターの取引が牽引した。その地方圏の商業施設は、訪日外客が地方へと流れ始めたことを受けて、収益増の可能性が見込めるようになっている。ただし、将来的には人口減少にもいち早く直面するため、いかに売上を維持向上するか、大胆な舵取りを求められる。地方へ訪れる訪日外客が増加しても、彼らに選ばれる施設づくり、施設運営が求められる。

こうした地方商業施設に向けてJLLは支援を行ってきた。例えば、ファミリー層のみならず、増加傾向にある高齢者や訪日外客に向けて、「モノ消費」から「コト消費」への移行を踏まえた消費空間を創出することにより、成果を上げている。地方商業施設を取り巻く環境には「課題」もあるが、例えば優秀な施設マネージャーを起用することで「機会」は充分にもたらされる。投資家は知恵の絞りどころである。

2019年は好スタート

2019年第1四半期の商業用不動産市場におけるリテールセクターの投資総額は1,810億円となり、前年同期比76%の増加となった。元号が改められ新しい時代へと向かう年の中、幸先の良いスタートを切っている。今後は、海外の政治経済の動向が与える影響は懸念されるものの、Oxford Economicsによると、名目個人消費は堅調に増加すると予測されており、リテール投資市場は堅調に推移する見通しである。(著:JLL日本 岩永 直子)

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