Share

March 19, 2019

2025年に開催される国際博覧会(万博)の開催地が大阪に決定した。テーマは「命輝く未来社会のデザイン(Designing Future Society for Our Lives)」 とし、IoTやAI、ビッグデータ等の革新技術によって社会全体が最適化された「未来社会の実験場(People’s Living Lab)」を目指す。りそな総合研究所の試算では経済波及効果は2兆2,000億円にのぼるとの見立てだ。

万博招致で都市機能の整備が進む

五輪や万博といった国際的な大イベントが実施される際、都市機能の整備・更新が必ず議題にのぼる。いわゆるインフラ整備であり、これには鉄道・道路・港湾等の都市施設の整備が含まれることはもとより、都市機能を最大限に発揮する重要なピースである不動産も例外ではない。実際、東京五輪の招致決定を受けて、大手不動産デベロッパーはこぞって大規模再開発に乗り出している。
この構図はそのまま大阪万博にも当てはまるだろう。会場となる夢洲は大阪市西端に位置し、現時点でJRや地下鉄の延伸計画が浮上。
連絡橋の拡幅計画もあり、将来的にはLRTやBRT、モノレールなどの検討もなされる可能性もある。これらの計画進展により、夢洲を含む大阪ベイエリアは梅田・御堂筋・難波といった大阪中心部からのアクセスが大幅に向上するとともに、付随的に大阪市全体の交通体系がさらに高次元へと再整備されることになる。夢洲へのアクセス向上を視野に京阪中之島線を九条駅まで延伸する構想が最たる例だ。これらの交通インフラ整備を呼び水に、万博開催を経済波及効果も見据えた形で大阪市内各所において不動産開発が計画・実施される可能性は高い。再開発には行政との折衝も踏まえると少なくとも5年超を要するが、万博まで7年の猶予がある。
2018年12月20日には大阪メトロが夢洲新駅と一体となった高層タワーの開発構想を発表する等、民間資本による都市再生が大阪の不動産マーケットの価値を一段と高めていくことが予想される。

賃貸・投資ともに活発な大阪不動産市場

一方、通常そうした大量の新規供給に対し需要面が不安視されることが多いが、現在の大阪不動産市況を鑑みるにその心配は杞憂に終わる公算が高いといえよう。
まずはオフィス賃貸市場であるが、大阪Aグレードオフィスの現在の平均賃料は2018年9月30日時点で月額坪当り20,267円、空室率は1.1%となっており、賃料上昇率は前年同期比で11%と二桁増を記録している。今後5年間(2019年-2023年)の大阪Aグレードオフィス供給予定量はわずか222,000㎡、年平均供給量にして44,400㎡と、過去10年の年間供給量の6割程度の限定的な水準だ。
したがって引き続きひっ迫した需給環境は続き、今後とも継続的に賃料が上昇していくことが容易に予想される。言い換えれば「空室不足」が顕著である現状を鑑みると、万博に向けて経済波及効果が期待される時期にかけての不動産開発と、労働力の受け皿となるオフィス床の供給は大阪全体経済にとってむしろ必須であるとさえ言える。
この賃貸市場の好況を受けて、投資家も大阪に注目している。大阪における商業用不動産投資額も拡大を続けているが、2018 年大阪圏では100億円以上の大型取引が
15件あり、2018年第3四半期の取引額も過去最高額を記録した。買い手には海外投資家の姿も目立つ。東京は2018年-2020年にかけてAグレードオフィスの大量供給がなされ、踊り場を迎えると予測しているが、新規供給が限定的な大阪は更なる賃料上昇が見込める有望マーケットだと国内外の投資家は見ている証左であるといえよう。

世界に都市ブランドを発信する絶好の機会に

万博会場となる夢洲は高度経済成長の波に乗り整備された郊外エリアの象徴であり、隣接する咲洲(南港)などとともにバブル崩壊によって遊休地化・不採算化した「負の遺産」の側面もある。東京も同様にバブル崩壊によって世界都市博覧会が中止に追い込まれるなど、湾岸エリアの再開発が停滞した過去があるが、湾岸エリアで棚上げされた遊休地は2020年東京五輪の中心会場として有効活用される。これと同様に、大阪万博開催決定を機に夢洲を含めた大阪湾岸エリアが本物の「レガシー(遺産)」となる時機を得たといえよう。過去の五輪開催地であるロンドンやシドニーでは、倉庫・工場跡地や廃棄物処理による土壌汚染地の再生を同時並行で実現した。大阪万博にも「リバイタライズ(再び命を吹き込む)」の期待が高まる。
また、万博は大阪の魅力を世界に発信するためのブランディングの千載一遇のチャンスと捉えるべきである。JLLの調査レポート「2018年版 都市比較インデックス – 世界都市の10類型」を見ても、大阪は “国内成長エンジン”の都市類型に属し、人口・経済規模は大きいものの、グローバルレベルで都市(経済圏)としての魅力が十分に理解されているとは言い難い。経済規模は世界8位にあり、経済圏としては世界主要7都市“ビッグセブン(ロンドン、ニューヨーク、パリ、シンガポール、東京、香港、ソウル)”に遜色のない「大都市」といえる一方、世界的な認知度を表す「ソフトパワー」や海外との結びつきを評価する「ゲートウェイ機能」の項目では低迷している。今回の万博招致はこの2つの弱点を克服するための絶好の機会となるはずである。そして京都や神戸といった周辺中核都市との連携強化を視野に、経済圏を確立する足がかりとしていくべきだろう。そうすることで東京と肩をならべる巨大な経済圏が日本に誕生することになる。
交通・通信等のインフラとともに、重要な都市機能となる不動産も都市競争力において重要な役割を担う。それは単に都市を形成する物質的なものではなく、都市を成功に導く牽引力である。特別感を創出できる印象的・象徴的モニュメントビル、生活の質向上のための柔軟な働き方を可能にするオフィス、低炭素社会志向のサステナビリティを実現する建物、テクノロジーと不動産の融合を図る不動産テック等、これからの都市社会に不動産が果たす役割は大きい。したがって、今回の万博のテーマである「命輝く未来社会のデザイン」は都市づくりにも通じ、テクノロジーやサステナビリティに溢れた大阪という都市全体が世界へのショーケースとなることを期待してやまない。
(著:JLL日本 赤城 威志)

Share

Never miss an update from The Investor.

Subscribe Now!