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May 15, 2018

長期間安定した収益を見込める物流施設が不動産売買マーケットで存在感を高め始めたのは2016年頃に遡る。オフィスビルや賃貸住宅といった伝統的な投資対象の価格高騰を受けての「モノ不足」が追い風となり、より魅力的なキャップレートが見込める物流施設へ投資マネーが殺到。2016年の直接投資額は800億円を超えたことは記憶に新しい。過熱気味ともいえる状況は2017年には幾分落ち着いたものの、2017年の物流施設に対する年間投資額は600億円を超え、以前として高い人気ぶりが窺える。セクター別に見ても物流施設は事業用不動産への全投資額の16%を占め、もはや「コアアセット」の仲間入りを果たしたといえよう。一方で2017年第4四半期のキャップレートは4.2%あり、東京Aグレードオフィスの2.9%は言うに及ばず、大阪Aグレードオフィスの3.4%、東京プライムリテール市場の2.8%と比較しても魅力的な投資対象といえるのだ。

相次ぐ新規供給への対応は?

首都圏では2017年からの3年間で約154万坪の新規供給が予定されている。年平均で51万坪もの物流床が市場に供給されることから、当然に需給が若干緩むことも懸念される。しかしながらJLLリサーチ事業部で発表した「東京ロジスティクスマーケットサマリー2017年第4四半期」では東京圏の物流施設の空室率は4.1%であり、すでに大量供給の流れは始まっていたにも関わらず空室率は極めて低いレベルにとどまっている。空室率が湾岸エリアに比較して高めで推移する東京圏内陸に所在する一部のマルチテナント型物流施設ではリーシングに苦戦しているという状況もあるものの、テナントの引き合いは引き続き堅調に推移しており、大きな懸念材料にはならないと考える。

長いスパンでのリースアップ計画で影響を最小限に

今回の大量供給では主に首都圏内陸部での新築案件が多く確認され、特にこれまで物流エリアとして認識されていなかった場所への進出もみられることから、需給バランスが軟化する方向へ振れる可能性は否定できない。しかしながらテナントとなるメーカー系企業の物流戦略は長い時間をかけてどれが最も効率的かを探るのが一般的であり、一朝一夕で決まるものではない。このように「時間がかかる」ことは物流施設の開発業者やオーナーも十分理解しており、各デベロッパーも長期的視野に立った上での開発計画を組んでいる。したがって一時的に空室率は上昇するものの、需要自体は旺盛である現状を鑑みると、空室率が高止まりすることは考えにくい。

eコマースや3PLの需要拡大に期待

前述のメーカー系企業以外にも、電子商取引(eコマース)やサード・パーティ・ロジスティクス(3PL)などが最近の物流不動産の需要を支えており、テナントの顔ぶれは物流不動産の充実とともに多彩な顔ぶれがみられるようになってきている。特にeコマース系のテナントは増え続ける物量と常に対峙する必要があり、効率的な物流フローを担うサプライ・チェーン・マネジメントの観点から、地理的にも分散することが求められている。こうした動きはこれまで物流エリアとして認識されていないところでの需要につながる一助となり、ひいては東京圏の物流市場全体への波及効果が期待される。また最近では加工センターとしての機能も物流施設に求められることも多くなり、「保管庫」以外の幅広い役割を担うようになってきている。こうしたことからも新規供給によって一時的に空室率は上昇する可能性はあるが、予想より早いペースで空室は解消していくものと考えられる。
(著:JLL日本 谷口 学)

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