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May 15, 2018

注目を集め続ける国内不動産市場、その魅力と展望

国内不動産取引市場は昨年、4兆円を回復するなど再び成長軌道への道筋がついた1年だった。3年ぶりに反転した不動産市場においていまや欠かせないプレーヤーとなったのが外国人投資家の面々である。 国内市場は古くから投資活動を行っているいわば 「老舗」に加えて、最近では新たに投資機会を求めて参入してきた「ニューカマー」も多数みられるようになっている。彼らの目を向けさせる日本市場の魅力とは何か、また彼らは日本市場の課題をどうみているのか。

良好な資金調達環境と市場への信頼感

昨年1年間の国内不動産市場への投資額のうち、外国人投資家の占める割合は約34.5% となった。前年比で2%と率の上では小幅な伸びにとどまっているようにみえるが、この割合は2009年の金融危機以来の最高であり、 金融危機直前の2007年に記録した47%に次ぐ高い割合である。こうした海外勢をひきつける最大の要因が「資金調達が容易」であることは疑いの余地はないだろう。仮に東京都心のオフィスビルを購入する場合、マイナス金利の恩恵を受けた貸出金利は平均で0.6%程度、これはアジアのなかでも突出して低いレベ ルだ。ここに一般的な借入割合(LTV)の60~ 65%が相まって、極めて魅力的な資金調達環境が構築される。自己資金で計算したいわゆるキャッシュ・オン・キャッシュの利回りは引き続き世界最高水準といえ、これが多くの外国人投資家をひきつける要因となっている。

また特に欧州の投資家に顕著な動きとしてあげられるのが「地域リスク」の最小限化である。欧州系投資家のほとんどはコア系のファンドであることが多く、投資リスクの軽減は投資方針のなかでも大きな割合を占める。そうした投資家がアジアを見渡したとき、中国本土は政治リスクへの懸念がまだくすぶり、香港は 物件価格の高止まりが続いている。一方でシンガポールはファイナンス面で魅力的ではない・・・となると投資家の目線は自然と日本へ向くことになる。それに加えてアジアでもっとも成熟した基盤を持つ日本経済への信頼感から、アジアへの投資を増やすなら日本といったファーストチョイスに選んでもらえる状況が加速しているといえる。

課題はどこにあるか?

一方で多くの外国人投資家が指摘する日本市場の課題は「物件価格の高騰」や「投資機会の著しい限定」などがあげられる。物件価格の高騰については数年前からの利回りの流れを見ても一目瞭然で、現在の利回り水準は史上最も低いレベルにあるといえる。キャッシュ・オン・ キャッシュ利回りが一定レベルをキープできるなど、良好な資金調達環境にあることが利回り低下のひとつの要因になっているのはなんとも皮肉な話ではあるが、特に安定した投資を好むコア系の外国人投資家にとって、ここ最近の国内不動産の物件価格は若干「手が出ない」レベルへと一段階あがりつつある模様である。加えて投資機会が限定されることでおのずと物件取得競争になり、また意思決定のスピードに差があることもあり国内勢の後塵を拝してしまうことも多くあるという。多くなったとはいえ外国人投資家の割合は、3分の1~半分は外国人で占められる英国や米国市場にくらべ極めて低いレベルにとどまっており、いざ取得競争となると国内勢に一日の長があるといえる。一方で一部の外国人投資家においては2020年にかけて特にオフィス市場の賃料上昇カーブに注視しており、持続的な成長がのぞめるかどうかも今後外国人投資家が投資を増やすひとつのカギとなりそうだ。

より多くの投資を呼び込むために

こうした課題があるにもかかわらず日本市場への参入がひっきりなしに続くのは、低金利などの要因はあるとはいえ、根底に流れるのはひとえに国内市場への信頼感・安心感があるためである。物件品質の高さ、高い運営スキルなどもそうした信頼感を醸成する大切な要因であることは多くの外国人投資家から評価されていることからも自明である。より多くの投資を国内外問わずより多くの投資家から受け入れるためにも、すべての市場参加者が同じ方向を向いてよりよい市場環境を構築していくことが必要であるといえる。
(著:JLL日本 内藤 康二)

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