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November 1, 2018

売買市場で存在感を一層増す強さの要因は?

魅力的な投資物件が枯渇しているという声を市場関係者のなかで引き続き聞く中で、J-REITだけはまるで別次元のごとく物件取得を続けている。むろんスポンサー企業が強力なバックアップを続けていることが持続可能な取得活動を支えているのは周知の事実であるが、同時にスポンサーが介在しない第三者間取引においても存在感を増している。その原動力はどこにあるのか。

低利回りでも取得

たとえば東京都心の小ぶりかつ築浅のオフィスビルへの投資でひときわ存在感があるのは、やはりオフィス系あるいは総合型のJ-REITである。今年8月、東急リアルエステート投資法人は東京・恵比寿の「ルーシッドスクエア恵比寿ビル」を45億円で取得した。国内外の投資家の多くが熱望する物件である。東急リートはこの物件を入り口の利回りで3.2%で取得した。これまでJ-REITといえば、その性質上ある程度の利回りがないと取得に踏み切らないといった極めて保守的な投資活動が主流だった。しかし最近はマーケット水準から一歩踏み込んだと思われる価格帯や利回りで取得するケースも多くなってきている。一見すると低利回りの物件をポートフォリオに組み込むと全体の利回りが低下し、ひいては分配金の低下にもつながりかねないというケースが考えられるが、分配金を下げることなく安定した運用を続けている。
低利回りの新規物件を取得しても大きく崩れない要因として「内部成長の力強さ」と「リファイナンス」があげられる。オフィスのみならず賃貸住宅や物流にいたるまで、賃貸市場は極めて好調であり、その結果いまや業界内でも規模の大きな「大家さん」になったJ-REITのキャッシュフローをより厚くしている。主要J-REITの決算資料を見ても増額改定による賃料上昇というフレーズが並んでいる。こうした増収が分配金の原資となり、低利回りの物件が組み込まれても大崩れすることがないひとつの要因となっている。またほとんどのJ-REITの現在の借入金はマイナス金利が導入される前の金利をベースにしている。こうした借入金を低い金利でリファイナンスできることもコストの低下につながり、ひいてはキャッシュフローに厚みを出させるもうひとつの大きな要因となっていると考えられる。

物件取得競争は続く

こうしたいわば「J-REIT一人勝ち」の状況は投資機会が少ない現状を考えると、他のプレーヤー、ことさらオフショアのプライベート・エクイティ(PE)にとって厳しい状況といわざるを得ない。一部の海外系オープンエンドファンドでは、ファンドレベルではあるものの厳しいデットコントロールを当局から義務付けられており、特にドイツのリテール系ファンドでは30%のLTVが最大というも のもある。こうなると利回りが一層低下するなかでの物件取得において、レバレッジが思うようにかけられない海外勢と、およそ50%のLTVながら分配金の原資も確保していることで踏み込んだ投資が可能なJ-REIT勢とではおのずと力量に差がでてきてしまう。J-REIT一人勝ちの理由のひとつはここにあると考えられる。
劣勢に立たされるPE勢だが、数は少ないもののJ-REITの出口やCRE系のリースバック案件、あるいはNAVが低い海外REITの買収などに活路を見出しており、この分野での売買活動が活発になれば市場全体が活性化することになる。J-REIT、PE、それぞれの強みが市場で発揮されることで持続可能な売買市場が構築されることが今後求められていくだろう。(著:JLL日本 内藤 康二)

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