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February 20, 2018

好調の理由は「過去のトラウマ」

「国内第2のオフィス集積地」大阪中心業務地区の賃貸オフィスマーケットが好調だ。JLLリサーチ事業部の調査では、2017年第3四半期の賃料(共益費込)は月額坪単価18,253円。前年比7.3%の上昇率を記録した。ちなみに東京中心業務地区の賃料(共益費込)は月額坪単価36,605円、前年同期比で2.1%の上昇に留まっている。

東京の賃貸マーケット自体、悪くはなく数字の面では活況といえる。空室率は3%を記録し、賃料上昇の機運は継続している。2018年に竣工予定のAグレードオフィスの内定率も70%に達し、需要の底堅さは健在だ。「好調」な東京を凌駕する大阪。マーケットの回復具合が際立っている。

賃料上昇率7%超、好調を維持

大阪の賃料上昇率が東京を超えた理由は「新規供給の少なさ」に帰結する。2016年の大阪Aグレードオフィスの新規供給はゼロ。17年は103,000㎡の新規供給となったが、「中ノ島フェスティバルタワー・ウェスト」(貸床面積70,479㎡)、「新MID大阪京橋ビル(ケイ・オプティコムビル)」(貸床面積32,280㎡)はどちらも満床で開業を迎えた。2018年以降の主要プロジェクトは同年9月竣工予定の「新南海会館ビル」(貸床面積34,711㎡)、2020年1月竣工予定の「(仮称)オービック御堂筋ビル」(貸床面積19,463㎡)を数えるのみとなっている。その後は「大阪神ビルディング(阪神百貨店)」・「新阪急ビル」を建替える「梅田1丁目1番地計画」が2022年春に竣工を控える程度だ。オフィスゾーンの延床面積は約1 4 3 , 0 0 0㎡と、ワンフロアあたりの面積は約4,500㎡と西日本最大規模だが、それまでに蓄積された拡張移転ニーズで、これらの供給床は十分に消化されるとみられる。JLLリサーチ事業部の調査では、2018年には大阪Aグレードビルは空室率2%を割り込み、平均賃料(共益費込)は2019年に月額坪単価20,500円、2021年には21,750円に達すると予測している。

東京では2018年-2020年にかけてAグレードオフィスが大量供給され、市況悪化が懸念されているが、大阪は正反対の状況。加えて「グランフロント大阪」(オフィス賃貸面積約23万6800㎡)が2013年の竣工以来、ようやく満室稼働に至り、賃料相場の上値が確定し、価格競争に終止符が打たれたのも大きい。

新規供給に踏み切れない「トラウマ」

とはいえ、賃料上昇の恩恵以上に、新規供給の抑制が「行き過ぎ」とも言える。現時点で空室が枯渇しテナントは「移転先を見つけられない」状態に陥っている。前述した「新MID大阪京橋ビル」はケイ・オプティコムが1棟借りしたが、移転元のオフィスビルの空室には入居希望者が殺到。まとまった面積の空室が発生すれば、賃料を多く払ってでも床を確保したいと考えるテナントがひしめき合っている。

一方、「需要があるなら新たに開発すべき」と考えられるが、大阪は新規供給によってマーケット全体が疲弊した過去がある。

2010年には「梅田阪急ビルオフィスタワー」や「大阪富国生命ビル」、「本町ガーデンシティ」、「御堂筋フロントタワー」などの大規模ビルが同時多発的に竣工し、約130,000㎡が供給されたことに続き、大規模複合ビル「グランフロント大阪」が開業した2013年には過去最高の約170,000㎡が新たに供給された。これは当時のAグレードオフィスの総貸床面積の12%にあたり、空室率が一気に上昇した。これらの開発プロジェクトはリーマンショック前に計画されたものであり、景気低迷時に竣工時期が重なったことで2013年には空室率10%を超え、賃料(共益費込)も月額坪単価15,000円まで低迷した。「暗黒時代」としてマーケット関係者の脳裏に刻まれている。

新規供給の引き締め続く

2013年に発生した大量供給に対する「トラウマ」はいまだもって根が深い。例えば、大阪駅前の一等地「大阪中央郵便局」跡地は、保有者の日本郵便が全国各地で大規模オフィス「JPタワー」の建設を進めており、いつ開発に着手されるのか注目されていた。これまでは公共空間「西梅田スクエア」となり、開発の目途は立っていなかったが、ようやく再始動が決定するなど、大阪でのオフィス開発を躊躇する一端が見え隠れしている。

Aグレードオフィス開発は完成までに数年を要し、加えて好調なインバウンド客の受け皿としてオフィスビルからホテルへ建替えるケースも見られているため、今後も新規供給は制限され、ひいては賃料上昇の機運はさらに高まる見込みである。こうした市況は、2010年前後の景気低迷時に物件を取得した投資家にとっては絶好の売却のタイミングとなり、買主はインカムの上昇が見込める。この投資妙味のあるマーケット環境を見過ごす手はないだろう。

(著: JLL日本 大東 雄人)

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