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昨年の不動産市場は3年ぶりに4兆円の大台を回復したが、セクター別の内訳を見てみるとリテールや物流施設などが主なけん引役で、「不動産投資の花形」とされてきたオフィスビルの影は年々薄くなるばかりである。しかしながら最近、そのオフィスビルに復権のきざしが感じられる。その主役はBグレードとよばれる中規模のオフィスビル群である。

JLLキャピタルマーケット事業部が昨年手がけた取引でも、一昨年に比べオフィスビル案件が明らかに増加している。これはマーケットがまだ回復途上であった数年前に取得された物件群がここへきてマーケットに出てきていると考えられる。当時の東京オフィス市場は稼働率こそ堅調だったものの、賃料は本格的な回復に向けての道筋がようやく立ったところであったが、そうした物件群はいま、大きな賃料のアップサイドと価格の高騰を引き連れてマーケットに戻ってきたといえる。

東京のBグレードオフィス市場は、折からの景気回復基調にともないここ数年順調に空室床を減らしてきた。空室率の低下にともなってオーナー側は賃料の増額に踏み切ることが可能となっており、オフィス市況の回復は力強さを増してきている。これに加えてテナント側の意識の変化も好況を後押しする原動力のひとつである。人手不足が常態化している今日、テナントである各企業はオフィス環境の改善にも注意を払い、また働き方改革が声高に叫ばれるなか、より便利かつ新しいオフィスビルへの移転を狙うテナントが多くみられるようになっている。高めの賃料設定でもそれは将来への投資と考え、移転を決めるテナントも多くなっているという。

こうしたオフィス市況の好調さは投資家の好感を買っている。投資に最適な30~50億前後のBグレードオフィスは不動産投資家にとってもっとも投資効率のよい価格帯ならびにセクターという認識が長く続いてきた。ここ最近はマーケットに出る売却案件が極端に少なくなり、それにつれて価格が高騰していることから多くの投資家はより高い利回りが期待できる物流施設や、より安定度の高い賃貸住宅などへ投資を振り向ける動きを続けてきた。しかしながらそうした投資家のなかでもやはり「都心のオフィスビル」に投資したいというのが偽らざる本音であったといえよう。またこれまで高利回りを提供してきた物流施設や賃貸住宅においても利回りの低下が顕著となってきており、場合によってはBグレードと変わらない程度になっていることもしばしばで、このような状況であればあえて物流や賃貸住宅を選択する意味はなくなる。そうした各セクターの利回り低下も「Bグレード回帰」の流れを加速させていると考えられる。

現在、Bグレードオフィスを取得しているのは、豊富な資金力と安定した運営体制を誇るJ-REIT勢と、個人の富裕層も含めたセパレート・アカウントであるとみられる。J-REITでは投資規模を拡大し高い分配金利回りを維持するため、いわゆるノンコアとされる物件群との入れ替えをするケースが目立ち、一方で個人富裕層などは意思決定の迅速さで他の買主候補に先んじて投資機会を確実にモノにしている。

不動産投資市場全体の利回りが低下傾向にあるなか、オフィスビルだけが特別低いという状況ではなくなりつつあり、かつオーナー側は利益確定の動きもみえるなか、Bグレードオフィスが再び「不動産投資の花形」としてもてはやされるのはそう遠い将来ではないと感じる。
(著:JLL日本 内藤 康二)

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