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eコマースの台頭や急速な技術の発展、消費パターンの変化に牽引されて、EMEAのリテール市場は深刻な構造変化の途上にある。

この構造変化は、小売業者や投資家に事業戦略の再考を促し、いずれもこれに対応している。

eコマースは成長しているものの、そのペースは当初予想されたほど早くはない。JLLのジェニー・テュールビーは「2012年にJLLは英国のオンライン売上高が2020年までに25%に達すると予想した。力強い成長が認められているものの、現在オンラインの売上高の割合は12%ー15%の間に収まっている。現時点までにオンラインへ移行する割合を過大評価していたかもしれないが、オンラインのみから物理的スペースへ進出した小売業者―およびクリック・アンド・コレクトの成功や採用―が、オンライン取引の成長をますます牽引することになるだろう。欧州大陸のオンライン移行率は更に低く、一層の混乱が示唆されている可能性もあるが、あらゆる国で一様の展開がみられることはない」と語る。

また、テュールビーは「eコマース売上高の増加は必ずしも伝統的小売支出を完全に飲み込むものではない点は重要である」とも指摘している。歴史的に、オンライン支出の増加は全般的な支出に累積的影響があることが証明されており、洗練された土地所有者や小売業者はクリック・アンド・コレクトやテクノロジーを駆使したショールーム、目的地ベースの小売業といったソリューションでこれを有利に活用している。

eコマースの影響を理解するには、その原動力を認識しなければならない。より多くの消費者にとって支出の方法ではなく、どのチャネルがニーズによりよく応えているかが問題なのである。第一世代の小売業者にとっての主な脅威はeコマース自体ではなく、業界がeコマースと小売を区別し続けていることを認識しない世代の台頭という人口構成の変化である。

この構造変容に対応するため、ヨーロッパの小売業者はより小規模な店舗やより多くの解約条項の交渉等、リース債務を管理する方法を検討するようになっている。短期リースは当然ながら予測可能な収入を重視するオーナーの本能に反するかもしれないが、市場力学の変化により素早く対応することを可能にする。テュールビーは「重要な点は妥当性、すなわちミクロ・ロケーションと資産の仕様に適合したリテールとレジャーのバランスのとれたミックスを『適正な立地』で提供することだ。エクスペリエンス重視のリテールが合言葉となっており、その勢いが弱まる兆しはほとんどみられない。土地所有者は、訪れる必要性がなくなっているからこそ、顧客が訪れたいと感じる場所を創造しなければならない。それは、ショッピングカートに入れられない商品への注目を高めることを意味する」との見解を示す。

これが最も顕著に表れているのは、飲食セクターの割合の増加である。従来あまり洗練されておらず、充実していなくても問題がない、ファッションの陰に隠れたサービスであったが、今や優れた飲食店はそれ自体がアンカーテナントとなることも多い。

ヨーロッパのリテール投資家は、リテール市場の構造変化が激しい米国の投資家よりも楽に呼吸することができる。JLLの調査では、米国はあまりにも多くの伝統的ショッピングセンターを抱えている。米国の人口1,000人当たりの総賃貸可能面積は1,274㎡、これに対してヨーロッパは216㎡となっている。更に、米国の大型センターの総賃借可能面積の46%が床面積あたりで比較的生産性の低い百貨店で構成されているが、ヨーロッパではその値は27%にとどまっている。

ヨーロッパのリテール不動産市場の弾力性については、JLLの調査によって欧州市場のほとんどで2017年第3四半期のプライムリテール物件の賃料が安定していたことが示されている。注目するべき点としては、ショッピングセンター部門ではギリシャ(前四半期比12.5%増)、スウェーデン(同7.1%増)、チェコ共和国(同4.3%増)、高級リテール部門ではバルセロナ(同3.7%増)で前四半期比の賃料上昇がみられた。米国では郊外のショッピングセンターがリテール全体の大きな割合を占めているが、ヨーロッパでは目抜き通りや歴史的な市街地の中心部に供給が集中しているため、自然な来場者数の多さやリテール、レジャー、飲食店舗へのアクセスが容易であることが時代に取り残されるリスクを最小化している。ただし、そうした地区が継続的に変化する厳しい要求に対応し続けることが前提となる。

では、リテールが時代遅れにならないための最善の方法とはどのようなものだろうか。テュールビーは「調査、柔軟性とパートナーシップが全てである。リテール物件のオーナーは、地区やその顧客についての知識や、その地区に最も寄与する方法についてのアドバイスを求めるべきだろう。魔法の方法がひとつだけあるというわけで“では、リテールが時代遅れにならないための最善の方法とはどのようなものだろうか。テュールビーによると、調査、柔軟性とパートナーシップが全てである”はない。ミクロの立地における妥当性を維持し、リテールは静的ではなく動的であることを理解しなければならない。需要があまりに急速に変化し、戦略が導入前に陳腐化することから、柔軟性がますます重要になっている。多くの土地所有者は、今や短期リースや柔軟なスペースを提供することで時流を逃さず、変化する消費者の嗜好に速やかに対応することを可能にしようとしている」と洞察する。

また、投資家とテナントの協力も必要である。テュールビーは「土地所有者と小売業者の間で、それぞれが複雑なサプライチェーンの一環をなしており、全員が貢献することで全員が利益を得るという合意が成されなければならない」と注意をうながす。絶え間なく急速に変化する消費者の需要が投資家から土地所有者に伝えられなければならず、同時に土地所有者は速やかに、かつ積極的にこうした需要に対応する準備を整えておかなければならない。

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