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May 15, 2018

昨年の米国インターモーダル・エキスポにおける主な話題の一つは、国内の道路や橋梁、トンネル、鉄道の再建に1兆米ドルを投じるというトランプ大統領のインフラ計画であった。世界経済フォーラムの最新の評価では、米国のインフラは世界第9位に落ち込んでおり、政府のイニシアチブは世界トップクラスのインフラを提供して米国の競争力を高めることを目的としている。この計画には今後10年間に2,000億米ドルの直接連邦支出が含まれており、官民パートナーシップで民間投資がこれを下支えする。

輸出の牽引

JLLエコノミスト兼港湾、空港、およびグローバル・インフラ担当チーフ・ストラテジストウォルター・ケムジーズは「米国が経済と雇用の成長率を維持するためには輸出を増加させなければならない。米国の輸出品は、主に農産物や炭素製品(石炭、原油、天然ガス、および石化製品)、プラスチックおよび樹脂などの1トン当たりの価値が低い商品である。米国はこれらの商品について生産コスト上の優位性を有するものの、効率的な輸送を行わなければ世界的な競争力を維持できる地域は非常に限定される」と危惧している。

従って、インフラ改善は米国が輸出で優位に立てる商品を中心に行われるべきである。これは、貨物を生産地域から水路沿いの港湾へ輸送するために必要な重量物搬送道路や、重量物の輸送に最善の手段である水上貨物を支えるインフラの強化に投資することを意味する。ケムジーズは「ミシシッピ水系は主に中西部を産地とする米国の輸出品のゲートウェイであるため、優先されるべきである。また、道路渋滞解消についてより協調的な取り組みが行われなければならない。これには、インフラにより多くのテクノロジーを組み込み、大量輸送システムのフル稼働を回復することが含まれる。最も大きな投資リターンをもたらすのは上位10~15位までの規模の港湾を中心としたプロジェクトと考えられる。これらは米国の海上貿易の90%近くを占め、航路の継続的改善、より大型のクレーンを支えるための岸壁強化、渋滞解消やトラックの輸送時間縮小のための踏み切りの高架化のための支援が必要とされている」とインフラ投資の重要性を力説する。

現在を足掛かりとする

米国の輸出入能力強化のためのインフラ改善は既に始まっており、その可能性が示されている。例えばジョージア州港湾局は大型船舶に対応するべくサバンナ川の浚渫(しゅんせつ)工事を実施しており、完了すればより多くの対アジア輸出品を積んだ喫水の深い船舶の航行が可能となる。ケムジーズは「サバンナ川はアジアからパナマ運河を経て航行する船舶の最初の寄航港であるため、投資は米国の貿易量に大きな影響をもたらす。連邦政府がより多くの資金を投入すれば、成果はより早く明らかになるだろう」と期待を込める。メキシコ湾岸の港湾、とりわけニューオーリンズの港湾改善も輸出増加に貢献する。ニューオーリンズでは、造船所改築のための投資が行われている。また、ニューオーリンズ港所有の短距離鉄道の拡張も行われる可能性がある。

一方、ロサンゼルス港はロサンゼルスを拠点とするセイブルック・キャピタルとオーストラリアの有名なインフラ投資家であるマッコーリーのパートナーシップにコンセッション契約を付与した。このパートナーシップは、港湾内の現在使用されていない面積110エーカーの旧石炭ターミナルを、コンテナのドレージを改善するべく設計された最先端の高速コンテナ施設である港湾パフォーマンス強化センター(HPEC)に再開発し、北米で最も混雑したコンテナ港の渋滞緩和と二酸化炭素排出量の削減が目的となる。

トランプ大統領の計画は実現するのか?

政府の野心が実現するか否か、そしてそれが最終的にどのような形で実現するのかは、現時点では不明である。インフラ計画は大統領の2018年予算案の一部として、現在議会で調整中の税制改革法案に組み込まれている。既に異なる意向が明らかとなっており、下院法案がインフラに市場のアプローチを導入することを避けようとする一方、上院法案は希少な連邦税を活用して州や地方自治体、民間投資家等外部からの資金を誘導することを支持している。ケムジーズは「米国の国家財政が厳しい状況を勘案すれば、民間セクターの資金を誘致することが支出目標の達成に不可欠となる。政府は17兆米ドルを超える財政赤字を抱えており、債務対GDP比は100%を大きく上回っている上、今後数年間はこの水準に留まる可能性が高い。これに対して、民間セクターの財は90兆米ドルを超えている。理想的には、公共セクターはプロジェクトの許可手続きを扱い、民間セクターが建設と運営の責任を負うべきである」と提言する。ヨーロッパ同様、米国も既存の有料道路等、安定したインフラを民営化するための株式発行を検討するべきだ。ケムジーズは「これはインフラプロジェクトへの市民の支持を得ることに役立つ可能性がある」と述べている。

残る大きな問題は、採択されるインフラ・イニシアチブの規模、形式とタイミングである。また、当初提案された金額で十分なのかという疑問もある。ケムジーズは「1兆米ドルという金額は、運輸セクターのニーズを満たすには十分だ。しかし、配電網、水処理や、学校・病院等の社会的インフラすべてを再整備するには不十分である。米国は全般的なインフラの修繕と開発をあまりにも長く放置してきたため、これらについても検討が必要となっている」と新たな課題に目を向けている。

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