Share

August 2, 2018

構造改革がカギも、市場活性化の切り札になりうる

オフィスや住宅、ホテルなどいわゆる「伝統的」な投資対象が枯渇している現在、脚光をあびているのが従来は投資対象とみられていなかった「オルタナティブ」と呼ばれるセクターである。介護施設やデータセンターなど比較的馴染みのあるものを始め、冷凍倉庫、セルフストレージに至るまで海外ではすでに市場が確立されている。高い利回りを求めて続々と投資家の参入が続くこうした「オルタナティブ」は、今後日本の不動産市場の核となりうるのか。

すでに「オルタナティブ」ではない介護施設投資

日本におけるオルタナティブで真っ先にあがるのは老人介護施設ではないだろうか。世界のどの国もまだ体験したことのない「超高齢化社会」が現実のものとなりつつあり、生命保険のCMでも「人生100年時代」とさかんに謳われる日本において、介護施設の充実化は諸外国をはるかに上回るペースで進んでいるといえる。不動産投資対象としての介護施設はまだ歴史が浅いものの、現在では多くの投資家が、日本の現状と将来を見越して投資を続けている。そのなかで介護施設への投資の可能性にいち早く着目したのはシンガポールのREITであるパークウエイライフである。もともとはシンガポールやマレーシアにおいて病院などメディカル系物件への投資を行ってきたが、日本の介護施設にいち早く着目し、現在では日本だけで47物件の介護施設を取得し運営を行っている。これまで介護施設の運営会社所有の物件が中心だったのに対し、直近では埼玉・鴻巣市の物件を、隣接する病院から取得するなど、物件の取得先も多彩になってきている。一方、国内勢も介護施設専門REITが相次いで立ち上がるなど、介護施設への投資はすでに国内では一般化しているといえる。投資における取得利回りも5~6%でここ数年推移してきており、同じ居住用アセットとして比較される賃貸住宅に比べ100~200ベーシス程度の上積みが享受できており、利回り面での投資妙味は大きいといえる。加えて介護施設運営会社上位100社に限ってみても関東地方だけで大小あわせて2,000ヵ所あるとされることから、投資のすそのはかなり大きいと考えられる。高齢化社会が進むにつれて一層の充実が図られることから、介護施設への投資は今後、国内不動産市場の新たな柱になるものと期待されよう。

構造改革の必要性

一方、海外では冷凍倉庫や日本ではトランクルームと呼ばれることの多いセルフストレージに対する投資が大きな盛り上がりをみせている。冷凍倉庫はその名の通り主にチルド商品を専門に扱う低温倉庫で、欧米ではそれ専門の業者があり、それぞれREITに上場したり3PL化したりしており通常の物流施設とは明確に区別されている。日本において冷凍倉庫の市場は極めて小さく、最大手のニチレイロジグループが持つ倉庫のキャパシティは世界最大のオペレーターである米アメリコールドの5分の1以下である。加えて冷凍倉庫業を営む企業の多くは非上場かつ非常に小さな規模で運営しているところがほとんどである。運営業者が直接保有している構図は、約20年前に米プロロジスが「倉庫を借りる」というコンセプトで参入する以前の、いわゆる旧態依然の構造を思い起こさせる。国内でこの市場が拡大 するには、外 資 大 手の参 入など大きな「エポックメイキング」的な構造改革が必要かもしれない。またセルフストレージも大きな可能性を秘めているとはいえ、現在のところ主流となっているのは貨物用のコンテナを置いたトランクルームが主流で、投資対象としては引き続き疑問が残る。この2つのセクターが欧米並みに成長するにはさらなる時間がかかると考えられる。

オルタナティブが持つ可能性

このほかデータセンターや太陽光発電など、オルタナティブには多くの可能性を秘めた投資対象が数多くある。高い利回りを確保できるこうしたセクターへの投資が加速していけば、国内の不動産市場はより活気付くであろう。いまはまだ小さくとも今後大きく花開く可能性は大いにあると考えられることから、構造的な改革を促すべく市場参加者の継続的かつ積極的な働きがけが必要である。
(著:JLL日本 内藤 康二)

Share

Never miss an update from The Investor.

Subscribe Now!