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June 17, 2019

テクノロジーを駆使して新たなサービスを提供する「不動産テック」によって従前の業務とは異なる新領域へビジネスチャンスを見出すことが可能だ。不動産管理を担うプロパティマネジメント(PM)業務や投資家の資産運用を代行するアセットマネジメント(AM)業務を担うJLL日本 不動産運用サービス事業部はPM・AMの知見にテクノロジーを組み合わせた「クライアントアカウンティングサービス」を提供している。データマネジメントが国内外の投資家・AM会社から高く評価されている。

PMレポートからSPCの決算書類の作成まで対応する「不動産テック」

金融商品化が進み、投資商品としての色合いが濃くなってきた商業用不動産。より高いリターンを得るため、不動産運用における分業制が加速度的に進んでいる。巨額の資金を有する投資家は複数のAM会社に資産運用を任せる一方、AM会社は各不動産を管理するために更に多くのPM会社を起用する。ここで問題になるのは、不動産ごとにAM/PM会社が異なるため、投資家のもとへ送られてくる各種レポートが統一されていないことだ。最終的に投資家やAM会社は自社フォーマットに合わせてレポートを編集することを余儀なくされる。これでは、不動産のパフォーマンスを迅速かつ的確に判断し投資戦略を検討することができない。

この無駄な事務作業を解消するのがJLL日本 不動産運用サービス事業部が提供している「クライアントアカウンティングサービス」だ。2004年のサービス開始以来、海外投資家を中心に利用者数を増やしてきた。

3つの機能で一気通貫にワンストップサービスを提供

クライアントターゲットは多数のポートフォリオを有する投資家やAM会社だ。機能は大きく3つに分けられる。

1つは物件毎やポートフォリオ毎にPM/AMレポートを作成するデータマネジメントサービスだ。JLLアジア太平洋地域で標準化されている不動産管理専用システム「MRI」を日本の不動産の商習慣に合わせてカスタマイズし、物件ごとに異なるPM会社からのPMレポートを統一フォーマットで作成、データの整合性を維持できる。PM会社はJLLが指定する統一テンプレートに数値を入力していくだけでMRIシステムの操作は一切不要。入力する内容はレントロールデータや賃料の請求データ、テナントからの入金情報、物件回りの支払い(水光熱費、修繕費)等だ。

2つ目の機能はSPC資金管理業務サービスだ。銀行口座の開設から閉鎖手続き、期中の口座・通帳管理を行うと共に、SPCの口座からの支払い代行業務等をJLLが代行する。

3つ目はSPCの会計レポート作成を含めたファイナンス関連の各種サポート業務だ。

PM会社は管理受託物件毎にキャッシュベースのPMレポートを作成する。一方SPC関連の会計処理は会計事務所にアウトソースし、会計事務所はPM会社から提出されたPMレポートを確認し、自社の会計システムに取り込むためPMレポートを編集・再加工しなくてはならず、無駄な作業時間・労力を要していた。

これら3つの機能を紐づけてPMレポートから会計データの処理まで一気通貫に対応でき、前述した作業負担を軽減できる点がクライアントアカウンティングサービスの最大の特長となる。PMレポートは賃料が入金時に売上計上するが、会計上は発生取引ベースで帳簿付けするため、前受賃料がいつの時期のものかPMレポート等で確認しなくてはならない。MRIのデータマネジメントを活用する事により、キャッシュ・発生ベースの双方の仕訳をMRIにより自動で仕訳生成される。PMレポートと会計データが連携している事からデータの整合性、正確性を実現する。加えて同一データを活用してポートフォリオレベルのレポートの提供することが可能だ。手前味噌だが、投資家やAM会社にとって「かゆいところに手が届く」ワンストップサービスといるだろう。

クライアントニーズに対応して進化を続ける

クライアントアカウンティングサービスはクライアントニーズを汲み取って進化してきた。日本でサービスを開始したのは2004年に遡る。バブル崩壊後、海外投資家が日本の不動産の主な買い手となり、AM・PM会社を積極的に起用したため、当初はPMレポートの作成機能を提供するようになる。その後、巨大なポートフォリオを有する投資家の要望に対応するべく、より広範の機能が設けられた。例えば、外国本社の既存会計システムとMRIシステム間で自動連携が図れ、アセットタイプ別、地域別の稼働率・NOI(収益率)、PM会社ごとのパフォーマンス分析が可能。そして不動産を所有するために設立されたSPCすべての会計処理に対応するべく決算書類の作成、会計監査対応まで一括してサービスを提供している。

自前主義の日系投資家も検討

海外投資家を中心にサービス利用者数は増加し続けているが、業務のアウトソーシングに積極的な海外投資家のみならず、現在は自前主義の日系投資家もクライアントアカウンティングサービスに興味を示していただけるようになった。自社仕様でITシステムを開発しても、時代背景や業務内容の変化によって既存システムを変更していかなくてはならず、投資負担が非常に重くなるという切実な理由がある。また、システムプロバイダーが開発したものを導入するにも初期コスト及びメンテナンスと、システムに習熟するのに時間がかかり、すべての機能を使いこなせない。コストだけを見てもアウトソースしたほうが圧倒的に負担は少ない。

コスト負担だけでなく、様々なデータの事務管理のために膨大な業務を抱えているAM会社の「無駄」を削減することが最大の狙いとなる。アセットマネージャーが注力すべきポートフォリオの価値向上や収益拡大といった知的生産性向上に直結する業務にフォーカスしてもらいたい。(著:JLL日本 元村 栄利)

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