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November 2, 2016

2016年6月は、英国と欧州にとって極めて重要な月となった。英国が国民投票でEU離脱を決めたことによって、これまでとはまったく違った状況になることが確実になった。JLL欧州・中東・アフリカ担当リサーチの責任者が、早晩英国がEUを離脱する可能性があった理由と、英国のEU離脱後にも英国の商業用不動産が活況を呈し続ける可能性がある理由について説明する。

宿命だったEU離脱

英国が1999年にユーロを導入しないことを決めた時点で、遅かれ早かれEUを離脱する確率は高くなっていた。最近になって英国経済が概ねユーロ圏よりも好調であったことがEU離脱派勝利の直接の原因の一つとして挙げられるだろう。それが根底にあるEUへの不信感を高める結果となり、移民流入を促す一因ともなった。この状況を永遠に維持することは不可能だったといえよう。

英国のEU離脱が現実的となった今、EUは、ユーロ圏内の深刻な構造的欠陥への取り組みに再び焦点を定め、ユーロ成功のために必要な政治的結束の強化に向けて動き出すことができる。この考えを否定し、そのことが北欧や中東欧のユーロ圏外の国にとって何を意味するのかと疑問に感じる人もいるかもしれないが、好むと好まざるとにかかわらず英国離脱は統合深進化に向けて役立つと思われる。

英国のEU離脱後も互いに良好な関係を維持することが双方のためになる。交渉に成功するには、違いを受け入れ、政治的な小競り合いを回避することが必要である。

英国のEU離脱について考える:強力な自由市場が優勢に

古いことわざにあるように、市場は不確実性を好まない。大半の人々もそうである。誰もが今知りたいと思っているのは、英国政府はいつ第50条を発動するのか、英国はEU離脱後に、国民や企業、経済全体としての国にとって適切な成果をどのようにもたらそうとしているのか、ということである。

英国経済の根底にあるファンダメンタルズは堅調で、EU離脱の国民投票後の不確実性は経済的なものではなく政治的なものだという点をJLLは明確に指摘してきた。前回の世界的な不況を引き合いに出す理由はない。その当時と今とでは状況がかなり異なっており、英国経済と世界経済は2008年と比べて遥かに好調で、家計、企業、国の借金を含め、負債は大幅に減り、多額の資金がその投資先を探し求めている。

6月24日よりずっと以前から、改革なしにEUの長期的な未来はどうなっていくのか、EU離脱に支持票を入れるのか、入れないのかという、政治的な不確実性に我々は直面していた。そして6月23日に離脱派が僅差で勝利すると(52%対48%)直ちに、波及リスクはどのようなものなのか、また、離脱条件のEUとの再交渉は誰が舵取りを行うのかという、2つの政治的な不確実性に直面することとなった。

これらの政治的な不確実性のうちの1つはほぼ解消している。実際のところ、英国の新しい首相の就任は予想を超える速さで行われた。交渉はまだ始まっていないが、英国の離脱についてのEUとの話し合いが行われる予定であり、テリーザ・メイ首相は国民投票前の姿勢にとらわれることなく離脱交渉に前向きである。それでも他国への影響とEUの将来という2つ目の不確実性は残る。

現時点では域内の他国への影響の兆候はほとんどなく、国民投票後の混乱に照らし残りの27ヵ国ではEU懐疑派がそれぞれの国で国民投票へ向けてロビー活動を行うことを思いとどまるのではないかと推測する人もいる。また、残りの27ヵ国の結束が強まったと考える向きもある。EUにとって最終的な未来がどのようなものになるのかは、EUが存在する限り議論が続くであろう。今のところは、その将来に関する不確実性は、2016年6月23日以前と同じままである。

適者生存

自由市場では、生きるか死ぬかの生存原理が働く。英国経済はこれまで繁栄を続けてきており、今後もそうあり続けるであろう。政府とイングランド銀行は、財政政策と金融政策によって経済安定と成長刺激を図るだろう。さらに変動通貨であることで、英国の資産価格の見直しが可能となる。マイナス面としてはもちろん、ポンド安が輸入コストとインフレ圧力に影響を及ぼすリスクがあるが、ダイナミックに反応する通貨にはかなりの上値余地がある。

英国の商業用不動産はおそらくある程度価格見直しが行われるであろうが、過去の経済危機の後のような下落には見舞われないであろう。英国の経済と不動産のファンダメンタルズは堅調で、雇用需要と市場供給の関係は比較的健全な状態を維持している。リテール系ファンドによる一部の英国資産の売却はある程度価格調整をもたらす可能性があるが、一等地の底堅さも明らかになろう。

ドルペッグの市場の投資家にとっては価格が今後見直されるかどうかにかかわらず、英国の資産はすでに大幅に割安なものとなっている。そのため、政治的な不確実性がある程度解消し、金融市場が「通常通り」の様相を呈する中、海外投資家にとって英国の不動産がすでに非常に魅力的な水準あると考える向きもある。より長期的なリターンを求める投資家は、2016年を、市場にアクセスし、通貨面のみでも割安な価格で一等地の資産を購入する機会を与えた年として振り返ることであろう。

英国の大手REITであるブリティッシュ・ランドは、ロンドンのオックスフォード・ストリートにある最近改装したばかりのデベナムズ百貨店を、海外の投資家に4億ポンドで売却する契約を交わしたことを先日発表した。この取引を契機に今後も数多くの取引が後に続くと思われる。英国の不動産価格の調整が避けられると言っているわけではないが、政治的な不確実性が解消しつつあり基調的な経済は比較的堅調であるため、商業用不動産市場は一部の人がおそらく予想しているよりは、底堅いものとなる可能性がある。

 

 

 

 

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