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November 2, 2016

アベノミクスがスタートした2013年以降の日本国内のホテル市場は、円安、査証条件緩和、オープンスカイポリシー、格安航空会社(LLC)の増加などに下支えされたインバウンド需要増加により好調を維持してきた。2015年にはアウトバウンドとインバウンドの数が逆転し、韓国・シンガポールを抜いて日本は約2000万人の外国人観光客誘致を達成した。この状況は国内宿泊需要の喚起にもつながり、2015年に4億人を超えた。うち外国人客の割合は2008年7.2%足らずであったが、2015年には2倍の14.4%に増加している。国内のホテル需要の大半は依然国内客に支えられているとはいえ、国内客の増加はここ数年停滞しており、今後ホテル市場の成長にはインバウンドビジネスへの真摯な取り組みが重要になってくるといえる。

東京のホテル運営指標の推移をみてみると、2011年に発生した東日本大震災の影響で稼働率は7割から一時3割台まで落ち込んだ。しかしその後数年をかけて回復し、現在は8割前後を推移するなど全般的に好調を維持している。RevPAR(一日当り一室当り客室売上)についても前回ホテルマーケットのピークだった2007年を100とすると、震災のあった2011年に63まで落ち込んだものの2015年には118ポイントまで上昇、ホテル客室売上は過去最高のレベルに達してきている。

かかる環境下、東京ではシティホテルの新規供給が課題となっている。東京では過去10年間で5ッ星ホテルの客室供給数は5%上昇したものの、再開発による用途転換やホテル面積縮小が相次いだ4ッ星ホテルは1%減少した。結果として、4ッ星ホテルが多くを占めるシティホテルの客室数はほとんど増えておらず、新規開業ホテルの殆どがビジネスホテルという状況である。

一方で好調なホテル運営環境を背景に、ホテル売買取引も活発で、2014年~2015年に年間100件以上の取引(スポンサー-REIT間取引を除く)があった。2016年は件数が減少傾向にあるもののヒューリックがグランパシフィックLe Daibaを約660億円で取得するなど売買金額ベースで過去最高を達成する勢いとなっている。

 

日本におけるMICEの課題

現在好調なホテル経営環境ではあるが、今後のさらなる成長のキーワードとしてMICE(Meeting, Incentive,Convention, Exhibition)ビジネスが挙げられる。

MICEは世界的に成長基調にあるビジネスで、単なる団体の観光よりも地元に大きな経済波及があることから世界各国で誘致活動が活発である。海外における代表的なMICE施設といえばシンガポールのマリーナベイサンズを思い浮かべる方が多いと思われるが、同ホテルのように3000人規模のコンベンションに対応できる大規模MICE施設が日本にはまだない。こうした施設は大規模ゆえ受け入れる側にとっても宿泊・飲食・ショッピング・交通・観光含め地元にとって大きな収入源となるため、積極的にMICE施設の開発を今後進めたいと発言している行政やホテルは多い。しかしながらその一方で課題も多い。日本国内にも小・中規模のMICE施設はあるものの、MICE施設の収容人数と隣接するホテルの客室数・宴会場面積がアンバランスで結果としてMICEニーズを取り込め切れないケースもあると聞く。MICEを誘致するにはMICE施設を開発・運営する行政、近隣の複数のホテル、地元団体など複数の関係者が一体となっての営業活動・インフラ整備が必要である。また規制緩和や利用者への税制優遇といった行政側の柔軟な姿勢もMICEビジネス成長の大きなカギとなる。

また忘れてはならない点が、MICEホテルは365日MICEビジネスに依存するわけにはいかないということである。例えば、現在日本で検討されているIR法案は、MICEをカジノ合法化と組み合わせることでMICE関連投資をより行ないやすくすることが企図されている。また、スパ・プール・料飲施設などを充実させたアーバンリゾートのようなコンセプトで非MICE需要を取り込むことも考えられよう。

MICEビジネスをより深く掘り下げていくうえで欠かせないのが日本人が持つ意識との差である。MICE=コストという意識、ビジネスとエンターテインメントが混同できない空気感、さらには個人消費が期待できる配偶者の同伴が一般的でない文化など、国際MICEのスタンダードがそのまま日本に当てはまるケースは少ないと思われる。よって国際MICEに頼るだけでなく国内での同様のビジネスの取り込みを模索していく必要があると考えられる。

多くの課題が指摘される中、国や自治体、産業界、地元団体などが官民一体となってMICEビジネス発展に向けた取り組みが始まっており、今後の行方が注目される。(著:JLL日本 沢柳 知彦)

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